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 リンゴの生育に影響するのは、毛虫や斑点落葉病だけではありません。 リンゴの枝を内側からボロボロにしてしまうのが、カミキリムシです。

カミキリムシの成虫は、枝を噛んでそこに卵を産み付けます。 枝を噛みほぐしてふわふわにしておくのは、孵ったばかりの幼虫へのプレゼントです。 親が用意してくれたやわらかい食べ物で育った幼虫は、次に固い枝の中を食い進みます。 カミキリムシが通った枝には大きな穴があき、もろく折れやすくなるのです。

 木を枯らす脅威は他にもあります。 シカです。 シカの好物のひとつがリンゴの木の皮で、角で傷をつけ、皮を剥ぎ取っては食べてしまうのです。 そうやって傷つけられた木は弱りはて、枯れていきます。


 もちろん、シカが畑に入らないようにと畑の周りを金網で覆っていますが、ジャンプ力のあるシカの侵入を防ぐには、2mほどの高さが必要になります。

 そのうえ厄介なことに、シカはたいへん頭が良いのですね。 ようやく周囲に金網を巡らせても、この金網がどうやって固定されているのかを簡単に見抜きます。

 金網を固定している紐の弱い部分だけに狙いを定め、飛びついて噛み切って、侵入口を作ってしまいます。 シカとの知恵比べは、今も続いています。

 カメムシはリンゴの汁を吸って、果実を台無しにします。 シカやイノシシも、リンゴの実が大好きです。せっかくできたリンゴが、シカの襲撃で全滅したこともあります。

スズメバチもリンゴの実が大好きで、独特な食べ方をします。
リンゴの実の中に潜り込んで、皮だけを残してキレイに中身を食べてしまうので、提灯のようなリンゴが木にぶら下がっているのです。

「奇跡のリンゴ」の木村さんの物語は、リンゴに実がなるまでに焦点が当てられています。 実がなるようになったあとも虫や動物との関係が続くなんて聞いていないよ、と愚痴のひとつも言いたいですが、言ったところで仕方がありません。

わたしが管理しているリンゴ畑にはおよそ550本のリンゴの木がありました。

しかし、カミキリムシやシカ、病気などの影響で次々に枯れていき、最初からあった木のうち今も残っているのはわずかです。 わたしは新たに250本のリンゴの苗を植えました。

これらの木が大きくなり、たわわに実ったリンゴを収穫できるようになるまでには、あとどれくらいの時間が必要なのかと考えています。

木村さんが無農薬でリンゴを実らせるまでが10年、自然栽培が軌道に乗るまでが30年。
やはり30年くらいはかかるのかもしれない、と覚悟しています。

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