今まで不思議に思っていたことがあります。 ススキなどの草を刈ろうとすると、アブやハチなど、大量の虫がやって来るのです。 刈られるのを嫌がるススキが、虫たちに命令して、わたしを攻撃させているかのようです。
また、リンゴの周りに野菜でも植えようかと苗を持っていって、強烈な腹痛に襲われたこともあります。 あとから気づいたのは、その野菜がリンゴの近くで育てるには向かないものだということでした。
リンゴの枝を剪定しようとして、咳き込むこともありました。 切るのをやめると、咳はおさまります。 まるで、リンゴが枝を切るのをやめさせようとしているようでした。
これらが植物からのメッセージだと思うようになったのは、テレビ番組で植物が出すホルモンのことを取り上げていたのを見てからです。 自分では動けない植物は、ホルモンを使って虫を追い払ったり、鳥を呼び寄せたりするらしいのです。
たとえば、テントウムシは偶然とは考えられない確率で虫に食べられているヤナギへと向かいます。
研究によるとヤナギの葉は、ヤナギルリハムシの幼虫に食べられると、テントウムシに向けて「幼虫に葉が食べられている」というメッセージとなる物質を放出しているようなのです。 テントウムシはそのメッセージを感じてヤナギへと飛んでいき、幼虫を食べるというわけなのですね。
アカマツの場合は、葉を食べる虫が来ると、その虫を食べるシジュウカラを呼ぶそうです。 そういえば、庭にあるアカマツに、何十羽もの小鳥が来て、楽しそうに鳴いているのを見て、いい餌 でもあるのかなと不思議に思ったことがあります。
このような共生の世界を知って「そうだったのか」と、わたしは膝を打ちました。 リンゴ栽培を始めた当初は、リンゴからのメッセージがわからずに、リンゴによくないことをいろいろとやっていたのです。
最近では「助けて!」とわたしを呼ぶリンゴの声が聞こえるような気がするときがあります。 リンゴには意識があり、わたしをじっと観察していて、こうしてほしいとメッセージを送っているのでしょう。 このメッセージを敏感に受け取って、厳しい環境の中で生き抜こうとしているリンゴにそっと手を添えることが、わたしにできることだと思っています。
番組では植物と菌の関係も取り上げていました。 わたしたちがよく目にするのは、胞子を拡散するための「キノコ」ですが、実は土の中には「菌糸」と呼ばれる細い糸状の体が広がっています。
菌糸は複雑なネットワークで繋がり、植物の根とつながって土から吸収した栄養分を植物に与え、植物は代わりに光合成で得た養分を菌に与えています。 森の中の幼木は、菌糸のゆりかごに守られて成長するのです。
今までわたしは畑を耕して、リンゴの苗を植えていました。 それは、菌糸のゆりかごをわざわざ破壊することを意味します。
自然栽培の考え方の基になった「自然農法」では耕さずに苗を植えます。 わたしは、自然農法の「不耕起」の意味をはっきりと説明してくれたこの番組に本当に感謝しています。
いままで言っていることはわかるけれど、そこまで必要なのかと思っていた「不耕起」ですが、本当に理にかなった方法だったのです。
植物の根と菌糸の関係を研究すれば、リンゴの生育に役立つのではないかと期待しています。
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4.虫や動物との関係
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